中小企業者小規模事業者のITツール導入を支援する「IT導入補助金」は、パソコンの購入費も補助の対象です。しかし、交付申請時にはいくつかの要件をクリアする必要があります。本記事ではIT導入補助金でパソコンを購入する際の手順や注意点を解説していきます。
IT導入補助金でパソコンは購入できるの?
IT導入補助金には、次の5種類の枠が設けられています。
・通常枠(A類型・B類型)
・セキュリティ対策推進枠
・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
・デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)
・デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)
この中でパソコンなどのハードウェアの購入費が対象となるのは、「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」です。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)とは
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)とは、ソフトウェア購入費やクラウド利用料に加えて、パソコンやタブレットなどのハードウェア導入費の補助が受けられる制度です。
〜50万円以下部分 | 50万円超~350万円部分 | ||
種類 | デジタル化基盤導入類型 | ||
補助額 | (下限なし)~350万円 | ||
機能要件 | 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 | 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 | |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 | |
対象ソフトウェア | 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト | ||
補助対象 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 |
参考:IT導入補助金2023
【ハードウェア購入費】
・PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機:補助率1/2以内、補助上限額10万円
・レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)では最大350万円までの補助が受けられますが、50万円以下とそれ以上の場合で交付の条件が異なります。50万円以上の補助を受ける場合は、会計・受発注・決済・ECの中から2つの機能を満たす必要がある点に注意しましょう。
IT導入補助金でパソコン購入費用を申請する手順
IT導入補助金では下記の手順に沿って交付申請手続きを行います。
それぞれくわしく確認していきましょう。
1.IT導入支援事業者やITツールの選択
IT導入補助金では、「IT導入支援事業者」のサポートを受けながら手続きを進めていきます。IT導入支援事業者とは、ITツール導入の手助けをしてくれるパートナーのような存在です。
事務局によってIT導入支援事業者の選定が行われていますので、その中からどの事業者を利用するか検討しましょう。
また、IT導入支援事業者によって対応している業種やITツールが異なります。利用したいITツールが決まっている場合は、ツール名から絞って対応業者を探すのもよいでしょう。
2.要件を満たすための諸手続き
交付申請を行うにあたって、次の諸手続きを完了させます。
・「gBizIDプライムアカウント」の取得
・「SECURITY ACTION」の実施
・「みらデジ」の「経営チェック」の実施
特に「経営チェック」については、2023年より新たに追加された要件です。経営チェックを行う際は「gBizIDプライムアカウント」が必須となりますので、先にアカウントの登録を済ませておきましょう。
なお、経営チェックを行わずに交付申請した場合、要件を満たしていないとして不採択となってしまいます。交付申請を行う際は、必ず経営チェックを行ったか確認するようにしてください。
3.事業計画書の策定
交付申請を行う際は、併せて事業計画書を提出します。「ITツールを導入することで期待される効果」や「ITツールの導入によって解決したい事業課題」などを踏まえたうえで事業計画書を作成しましょう。
また、事業計画書の作成はIT導入支援事業者と協力しながら作成します。不明点や疑問点についてもサポートしてくれますので、あまり不安を感じる必要はないでしょう。
4.交付申請手続き
事業計画書が作成できたら、申請マイページから提出を行います。交付申請にあたって、下記の書類の提出が必要となりますので、事前に用意しておくとスムーズです。
法人 | ・履歴事項全部証明書(3ヶ月以内に発行されたもの) ・法人税の納税証明書(その1またはその2) |
個人事業主 | ・運転免許証または運転経歴証明書または住民票 ・所得税の納税証明書(その1またはその2) ・確定申告書(令和4年分) |
5.ITツールの発注・支払い
補助金採択の連絡を受けたら、パソコンやソフトウェアの発注・支払いを行います。
支払い後は、正しく補助金が利用されたかの検査(実績報告)が行われ、請求書や支払証憑などの提出が必要となります。加えて、パソコンを購入した場合は納品書や写真の提出が必要となりますので、あらかじめ準備しておきましょう。
なお、事前に申請したITツールと異なる製品を購入した場合は補助金の対象外となります。中古品やリース契約のITツールなども対象外となりますので注意してください。
6.事業実施効果報告
最後に、ITツールを導入した後の効果について報告を行います。事業実施効果報告には期限が定められていますので、IT導入支援事業者のサポートを受けながら必ず期限内に提出しましょう。
IT導入補助金2023でパソコンを購入する際の注意点
IT導入補助金2023を活用してパソコンを購入するときには、次の3点に注意が必要です。
・IT導入支援事業者に登録されているか確認
・ITツールの発注・支払いは交付が決定してから
それぞれくわしく確認していきましょう。
パソコン単体では申請できない
デジタル化基盤導入類型でパソコン購入の補助金を受けるためには、併せて対象のソフトウェアを導入する必要があります。加えて、導入するソフトウェアは次の4つの機能の中から1つ以上の機能を搭載していなければなりません。
・会計機能
・受発注機能
・決済機能
・EC機能
パソコン単体では交付申請が行えませんので注意しましょう。
IT導入支援事業者に登録されているか確認
デジタル化基盤導入類型で交付申請を行う場合、パソコンとソフトウェアはIT導入支援事業者を通じて購入する必要があります。自ら家電量販店などで購入したパソコンは補助金の対象となりませんので注意してください。
事務局に登録されているIT導入支援事業者は公式サイトで検索できるようになっており、下記のようにパソコンなどのハードウェア販売を予定している事業者に絞って検索することも可能です。
画像引用:IT導入補助金「IT導入支援事業者・ITツール検索」
ITツールの発注・支払いは交付が決定してから
IT導入補助金では、IT導入支援事業者と事業計画を立てながら取り組んでいきますが、実際にITツールの発注・支払いを行うのは、補助金の交付申請が採択された連絡を受けた後です。
交付決定前に購入したITツールは補助金の対象外となりますので、発注のタイミングには十分注意しましょう。
IT導入補助金2023申請スケジュール
IT導入補助金の2023年分は既に交付申請がスタートしており、現在は下記の募集分までスケジュールが決まっています。6次締切以降も随時日程が決まり次第、スケジュールが公開されていく予定です。
【デジタル化基盤導入類型(デジタル化基盤導入類型)】
8次締切分 | 9次締切分 | 10次締切分 | |
締切日 | 2023年9月11日 (月) 17:00 | 2023年10月2日 (月) 17:00 | 2023年10月16日 (月) 17:00 |
交付決定日 | 2023年10月24日 (火) (予定) | 2023年11月6日 (月) (予定) | 2023年11月20日 (月) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00 | 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00 | 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00 |
事業実績報告期限 | 2024年4月30日 (火) 17:00 | 2024年4月30日 (火) 17:00 | 2024年5月31日 (金) 17:00 |
なお、締め切り時間を過ぎると申請マイページから一切申し込み手続きができなくなります。締め切り時間の直前はアクセスが集中してつながりにくくなることが想定されますので、申請手続きは余裕を持って行いましょう。
まとめ
IT導入補助金2023では、「デジタル化基盤導入類型」でパソコンの購入費も補助の対象となります。ただし、補助金を受けるためには併せてソフトウェアの導入も必要となる点に注意が必要です。すでに2023年分の交付申請はスタートしていますので、ぜひ利用を検討してみましょう。