新型コロナウイルスの影響により、会社の規模に関わらず多くの企業でテレワークの導入が進んでいます。求人などを見てみても、「完全テレワークOK」などといった謳い文句も増えてきているのが現状です。
しかし、その中でも総務の部署はテレワークが厳しいという現実があるのをご存じでしょうか?なぜテレワークが出来ないのか、今後総務でテレワークを推進するためには何を準備すればいいのかなどを、本記事で詳しくご紹介致します。
総務はテレワークができないと言われる理由
まず、総務の仕事とは一体どのようなものなのか、実は詳しく知らないという方が多くいます。簡単に言ってしまえば「社内の便利屋さん」といった立ち位置となります。備品の管理、ファイリング、電話対応などがあり、会社によっては秘書業務などを請け負っているという事もあるでしょう。
そんな総務は、なぜテレワークが出来ないと言われているのか、主な理由として挙げられる4つの要因があります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
押印や郵送
東京都港区が総務担当者へテレワークに対する調査を行ったところ、テレワークの実施が出来ていないという回答の割合が66.5%と、半数以上という結果になりました。その一方で、毎日テレワークを行っていると答えた総務担当者の割合は、なんと2.6%という非常に少ない数字になっています。
総務の仕事の代表的業務と言えば、書類の押印や郵送手続きがあります。テレワークが実施できない総務担当者のおよそ40%が、いわゆるハンコ出社、郵送出社のために出社せざるを得ない状況にあるという現実があります。
コロナウイルスによりテレワークの推進が盛んになっているという時代の背景があっても、急激な変化に対応出来ず、デジタル化できないまま従来のやり方を行っているため、ハンコを押す、郵送するためだけに出社しなければいけない総務担当者が多く存在しています。これが、総務はテレワームが出来ない大きな要因の1つと言えるでしょう。
業務のデジタル化が進んでいない
総務の部署が扱っている業務には、先程のハンコを必要とするものや郵送するべきものなどを含め、紙媒体で取り扱わなければいけないものが非常に多くあります。これまでは、こうした紙媒体を主とした書類の作成や契約書の保管などはごく当たり前でした。
しかし、環境保護の観点やコストの削減を考慮した結果、紙媒体を減らしてデジタル化する動きも増えて来たという事実もあります。そんな中、コロナウイルスの影響からテレワークの推進が急激に加速し、その変化に対応することが困難なためにデジタル化が進んでいない企業も少なくありません。
業務のデジタル化が進んでいないという問題を抱えている企業は、これまでもデジタル化に変更させることはあまりせず、従来通りの紙媒体を主としたやり方を変えずに行ってきたため、テレワークが進んだ現代でも時代の流れに乗ることが出来ていないと考えられています。
オフィスの作業環境が最も効率が良いと思っている
総務の業務は、そのほとんどが他部署が担当していない事務的な作業が主となっています。そのため、自宅、もしくはテレワークの環境下よりもオフィスの作業環境が一番効率的で作業が出来ると考えている総務担当者も多くいるでしょう。実際、自宅に作業環境を作るためには従来の方法のままでは難しいことが多くあります。
新しくルールを定めたり、環境を整えるための準備、手間などもかかってしまう事が懸念されています。また、自宅にパソコンなどがない場合、こうした機器をそろえなければいけないため費用も大きくかかってしまいます。
オフィスの環境下で仕事を行う事に慣れているという事もあるでしょう。また、総務での役職がある担当者が個人的にオフィスでの作業を推し進めているという企業も、多く存在しているのも事実です。結果として、オフィス環境を自宅へ移行させることの難しさ、役職者のテレワークに対する意識の低さや理解の無さなどが、総務がテレワークが出来ないとされる大きな要因となっています。
来客対応
総務の仕事では、会社へ訪問されてきた方の来客対応も含まれています。基本的に総務の業務内容は、会社への出社ありきで取り組まなければいけないものが多くあります。この来客対応もそのうちの1つと言えるでしょう。アポイントなしでの飛び込み営業などは、この時代では減ってきてはいますが、完全になくなったという訳ではありません。また、取引先企業からの来客などもあります。
この場合、総務の方が対応をする必要があるため、出社しないという事が難しく、テレワークの推進が行えない原因になっています。
また、来客対応と同様に、郵便物の確認も重要な業務として挙げられます。郵便物の受け取りは、毎日総務が処理を行わなければいけないという企業も少なくはないでしょう。その結果、総務が必ず出社して郵送物を受け取り、確認するという業務をしなければいけなくなります。
デジタル化が進んでいないという事に繋がりますが、来客対応や郵便物の確認のために出社する必要がある場合、こうした課題を解決させるためのツールやサービスの導入などが全く進んでいないという現状が大きく関係しています。
総務のテレワークのデメリット
多くの企業で推進しているテレワークですが、良いことばかりではありません。当然デメリットは存在します。総務のテレワークにおけるデメリットで特に大きいポイントとなるのが、従来のやり方が一変してしまうため、担当者自身が非常に不便さを感じてしまうという点です。
慣れるまでは、これまでのようにスムーズな作業を行うことが難しくなってしまうでしょう。前述したように、自宅に作業環境を整えるための時間や手間、費用などが掛かり簡単に移行することは出来ません。
また、総務が扱う資料や契約書などの中には、機密事項や経営に関わる個人情報などが記載されている書類も数多く存在しています。テレワークを行うとなると、重要書類を社外に持ち出さなければいけないこともあるかもしれません。そうなるとセキュリティリスクが増加してしまうため、当然書類の紛失や盗難には細心の注意を払う必要があります。
さらに、テレワークに移行すると社員同士で気軽にコミュニケーションが取れなくなってしまうため、他部署の情報が入りにくくなってしまうという事もあります。
このように、総務がテレワークを行うためには様々な課題があり、その1つ1つが業務に関係する項目となるため、簡単にテレワークを導入させることは出来ません。仮に何の準備もなくテレワークを導入した場合、業務が滞り企業全体に影響が出てしまう恐れがありますので、こうしたデメリットをしっかりと把握しておくことが重要となります。
総務のテレワークのメリットや期待できる効果
前述したように、総務のテレワークには多くのデメリットが存在します。しかし、一方でメリットももちろんあります。仮に企業全体としてテレワークを推奨している場合、やはり総務もテレワークでの対応を行っていく事が必須となるでしょう。ここでは、総務がテレワークに移行した際のメリットをご紹介致します。
優秀な人材の離職防止
総務がテレワークを導入する事により、優秀な人材の離職を防止する事に繋がります。総務は個人情報や重要書類の管理、コミュニケーションインフラの整備、営業拠点の管理などのように、企業の運営を行う上で特に重要な機能を担っています。会社の規模が大きくなればなるほど総務は欠かせない部署と言えるでしょう。
そのため、企業にとって総務部の人材がもし離職してしまった場合、新たな人材を確保する事は容易ではありません。優秀な人材の離職を未然に防ぐためにも、テレワークの導入は非常に重要なポイントと言えます。
事業の継続性の向上
前述した通り、総務は運営をする上で重要な機能を担っており、会社の要と言っても過言ではない存在です。もしも、オフィスや会社の入っているビルが火事や震災などで被害を受けてしまった場合、当然出社して業務を行う事は難しくなりますが、テレワークを導入していればそのような心配は必要なく、事業の継続性が向上します。
近年自然災害が増えてきており、大型の台風やゲリラ豪雨により建物が崩れるといったニュースが必ず生じています。地方だろうと都会だろうと、こうした自然の驚異は変わることはありません。もしも自社が被害に遭ってしまった場合、総務がテレワークを導入していれば自宅での作業が可能となるため、会社の運営を復旧させることも早めることが出来るでしょう。
安全と健康の確保
テレワークの推進が一気に加速したのは、冒頭でもお話しした通り新型コロナウイルスの影響が大きくあります。ワクチン接種などにより落ち着きを取り戻しつつありますが、更に新たな変異株が発見されたりと予断を許さない状況は続いています。
そんな中、公共の交通機関を使っての通勤は非常にリスクが高く、出来れば使用したくないと考えている社員も多くいるのが現状です。テレワークを導入する事により、こうした危険を回避し安全と健康を確保する事が可能となります。
総務の場合、他部署や取引先担当者とのやり取りも多くあるため、感染リスクを最小限にとどめることが企業を守ることにも繋がっていくでしょう。
総務のテレワーク推進に向けた準備
総務でもテレワークの導入を検討しているものの、何から行えばいいのか分からないと悩んでいる担当者は多くいるでしょう。具体的に、どういう点に留意して導入すべきなのかをここでしっかりと把握し、課題を解決しつつ業務が滞りなく行えるように徹底した準備を行ってください。総務のテレワーク推進に向けた準備として重要となる4つの項目について、それぞれ詳しくご紹介致します。
ペーパーレス化
本記事でもお話ししたように、総務のテレワークが進まない大きな要因となっているのが紙媒体での作業が多くあるという事です。しかし、言い換えれば紙媒体をデジタル化しペーパーレスする事により、総務のテレワーク推進は一気に進められると言えるでしょう。
総務の紙媒体での業務は、郵送されてくる請求書、契約書、領収書などの処理や、帳簿などと管理が主となります。こうした紙媒体を減らしてペーパーレス化を促進させることで、テレワークへの意向もスムーズになりますし、同時に押印などもデジタル化させることが可能となるため、ハンコ出社の必要も軽減されていきます。
また、電話や郵便物などは、代行サービスなどを利用する事で出社の必要性をなくすことが可能となります。こうしたサービスの活用も、総務のテレワークを推進させるためには欠かせないポイントと言えるでしょう。
テレワーク下のセキュリティ対策
総務の業務では、セキュリティの強化は非常に重要です。先程もお話ししたように、扱う資料や書類は社外秘なものが多くあるため、テレワーク化する事によってセキュリティリスクが高まってしまうでしょう。
こうした不安を解消させるために、リモートデスクトップや仮想デスクトップなどを利用して社外に情報が漏洩しないよう防いだり、全社員へルールの徹底を行い、対策を講じることが可能となります。
企業でパソコンのセキュリティシステムを導入し、閲覧の制限やパスワードの設定など、厳重なセキュリティが必要となることもあるでしょう。
リモートワークを行ったために重要事項が社外に漏れてしまったという事が起こらないよう、導入前にしっかりと準備を行い、抜け目がないように徹底したセキュリティ対策を行う事が大切です。
テレワーク化の労働条件をルール化
テレワークを導入する場合、当然出社とは労働環境が異なってきます。そのため、条件をルール化して全社員に周知させておくようにして下さい。
- パソコンの使用やツール利用の際の注意点や手順
- テレワークの勤怠状況の確認方法や管理方法
- 就業時間、雇用条件についての情報共有
一例としては、上記のような内容が挙げられます。事前にしっかりと情報を周知させ、変更箇所や従来通りの部分などについて全社員がしっかりと把握しておけるように、徹底した準備を行ってからテレワークの導入をするようにしましょう。
情報の共有は、導入後のトラブルを回避するためにも非常に重要です。後々大きな問題が生じてしまう事の無いように、正しい情報を全社員で共有しておくようにして下さい。
コミュニケーションツールの導入
テレワークを導入する事により、これまでとは違って簡単に社員同士でコミュニケーションを取ることが難しくなります。そのため、テレワークの導入前にビジネスチャットを取り入れ業務連絡に活用していきましょう。
現在ビジネスチャットは多くの種類があるため、自社と相性が良いものを選択する必要があります。それぞれの機能や特徴をしっかりと比較し、一番マッチするものを見つけて下さい。
ビジネスチャットを利用する事により、プロジェクトや部署ごとのグループを作成したりビデオ通話でオンライン会議を行う事も可能となります。また、ビジネスチャットは電話やメールの代わりとしても活用することが出来ますので、総務のテレワーク導入にかかってしまう手間や負担を削減しながら、スムーズに準備を進めていくことが出来るでしょう。
まとめ
総務は会社の重要な柱となる部署です。しかし、その反面テレワークに簡単に移行させることが出来ないという課題もあります。
- 担当者自身が不便さを感じてしまう
- 重要書類の持ち出しによるセキュリティリスク
- 他部署と簡単にコミュニケーションが取れなくなる
本記事では、上記のようなデメリットをご紹介致しました。しかし、徹底した準備を行うことでこうしたデメリットを解消しつつ、今まで以上に業務の効率化を図ることも可能となります。
一気に変化させてしまうと、慣れもなく戸惑うことが多くなってしまい、スムーズな業務を行う事が困難となってしまいます。まずは徹底的に事前準備を行い、ゆっくり徐々にテレワークに移行させていくようにするといいでしょう。