ChatGPTの出現により、改めて注目を集めたAI市場。ChatGPTは月間のアクティブユーザー数が史上最速で1億人を突破し、日本国内でも大きな話題となりました。
そんなChatGPTに対抗する形で発表されたのが、Google社が提供する「Bard」です。
「ChatGPTもBardも優れたAIツールであることはわかっているが、両者の違いはよくわからない」という方も多いのではないでしょうか?
本記事では、ChatGPTとBardの違いと共通点や、利用前に知っておきたい両者の課題を紹介します。できるだけ難しい言葉は使わず、AIに詳しくない方でもわかるよう解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
ChatGPTとBardの基礎知識
まずは、ChatGPTとBardがどのようなツールなのか、それぞれ紹介していきます。
ChatGPTとは?
ChatGPTとは、アメリカの企業OpenAIが開発した人工知能ツールのことです。2022年11月にリリースされ、2023年1月には月間アクティブユーザー数が1億人を突破しました。
ChatGPTは、人とチャットしているかのように、自然にやり取りできることが特徴です。
主な活用方法は以下の通りです。
- 文章を書いてもらう
- さまざまなアイデアを出してもらう
- 相談に乗ってもらう
- 文章を要約してもらう
- 他言語を日本語に翻訳してもらう
- プログラミングコードを書いてもらう
Bardとは?
Bardとは、Googleが開発したAI「PaLM2」をベースとした人工知能サービスのことです。2023年2月に発表され、3月21日にアメリカとイギリスで実験版が公開。同年4月18日ごろには日本でも公開され、5月からは日本語にも対応できるようになりました。
「Googleの検索エンジンと連携して質問に回答できる」という特長があり、提供元であるGoogleは、Bardを「Google検索の補完的な体験」と位置づけています。
現時点(2023年7月)では試験運用中となっており、本格的な運用が始まる時期は明らかになっていません。
ChatGPTとBardの主な違いと共通点
ChatGPTとBardの違いと共通点について、下記の4つの視点で解説していきます。
- 回答の提示方法
- 回答に使われる情報源
- 活用できる用途
- API版やスマホアプリの有無
回答の提示方法
ChatGPTとBardには、回答の提示方法に大きな違いがあります。
ChatGPT | Bard | |
回答のバリエーション | 1パターン | 3パターン |
検索画面への遷移 | × | ◯ |
ChatGPTは、1回の質問に対して回答を1つ提示する仕組みです。そのため、質問の意図とは違う回答が提示された場合、再び質問しなければなりません。
一方で、Bardは1回の質問に対して3パターンの回答を提示します。
各回答案には違う内容が書かれているため、最初に提示された回答がいまひとつでも質問し直す必要がありません。
また、Bardの回答には「Googleの検索結果を表示させるボタン」があり、Googleの検索結果へ直接遷移できるのも特徴です。
ただし、すべての質問に対してGoogle検索へ遷移するボタンが表示されるわけではありません。実際に使ってみると、Google検索へ遷移するボタンが表示されない場合も多くあります。いつボタンが表示されるかはわかっていません。
両者の共通点は、情報が100%正しいわけではない点です。どちらも間違った情報を提示することがあるため、回答内容のファクトチェックが欠かせません。
回答に使われる情報源
ChatGPTとBardでは、回答に使われる情報源にも違いがあります。
ChatGPTは、現時点(2023年7月)で2021年9月までのインターネット上にある情報を学習し、その中から回答を生成しています。2021年10月以降の情報は学習していないため、最近のニュースなどについて質問しても答えられません。
例えば、2023年3月に開催されたWBC(ワールドベースボールクラシック)の優勝国を質問しても、ChatGPTは答えられませんでした。
一方で、BardはGoogle検索と連携して最新の情報も提供しています。
ChatGPTが答えられなかった「2023年3月に開催されたWBCの優勝国」を聞いてみると、正しい答えが返ってきました。
現状では、情報のリアルタイム性はBardが一歩リードしていますが、どちらのAIも学習を続けていくはずなので、差はなくなっていくと予想されています。
活用できる用途
活用方法にも共通点と違いがあります。
両者に共通している用途には次のようなものがあります。
- 質問に答えてもらう
- 与えた条件で文章を生成してもらう
- 会話を通してアイデアを出してもらう
違いは、コーディングへの対応です。
API版やスマホアプリの有無
ChatGPTはWeb版だけでなくAPI版も一般公開されており、さまざまなツールが連携しています。一方で、現時点(2023年7月)ではBardのAPIは一般公開されていません。
▼APIとは? ソフトウェアやプログラム同士をつなぐ接点のこと。例えば、ChatGPTのAPIを使うと、さまざまなツールでChatGPTの機能を使えるようになる。現時点で、LINEやチャットボット、文章生成ツールなど、さまざまなツールがChatGPTのAPIを利用している。 |
BardにAPIの公開について質問したところ、APIを一般公開する予定ではあるようでした。
また、スマホアプリの有無にも違いがあります。
ChatGPTは、2023年5月にiOS向けスマホアプリの提供をスタートしました。Android向けのスマホアプリも対応予定とのことです。
一方、Bardはスマホアプリはなく、Web版のみとなっています。現時点(2023年7月)では、スマホアプリについての情報は公開されていません。
ChatGPTとBardに共通している課題
ChatGPTとBardには、共通する課題が2つあります。
- 誤った情報を提示する可能性がある
- 入力した情報が流出する恐れがある
1つ目は「誤った情報を提示する可能性がある」こと。
ChatGPTもBardも、回答が100%正しいわけではありません。回答が間違っているケースも多いため、内容の精査が必須です。
2つ目は「入力した情報が流出する恐れがある」こと。
どちらも、質問する際に入力した情報が、AIの学習に使われると公表されています。つまり、入力した情報が、他の人への回答として表示される可能性があるというのです。
例えば、業務を進めるために「文章の要約」や「アイデア出し」として使う場合、機密情報を入力しないよう注意しなければなりません。社員が何気なく機密情報を入力してしまう前に、しっかりと自社でルールを定める必要があります。
ChatGPTの場合、API版を利用すれば情報漏えいの心配はありません。API版では、入力した情報がAIの学習に利用されないと明言されています。そのため、業務で使う場合は、API版のChatGPTの利用がおすすめです。 |
まとめ
ChatGPTもBardも、私たちの生活や働き方を良い方向に変えられるツールです。しかし、両者には「情報の正確性」や「セキュリティ面」での注意点もあります。仕事で活用する場合は「回答をそのまま使わない」「機密情報を入力しない」といった点に注意しながら使用しましょう。