近年では、ITテクノロジーの技術の進化は目覚ましく、特にAI分野は凄まじい勢いで進化を遂げています。
現在AIの分野で世界中で大きな注目を集めているのが、OpenAIが開発したAIプラットフォーム「ChatGPT」です。興味・関心を持っている方も多いのではないでしょうか。
当記事では、ChatGPTの概要・特徴・メリット・デメリットから、社内利用の可否・懸念点・利用状況、社内利用におすすめのチャットボットの概要・メリット・おすすめ製品までを解説しています。
ChatGPTについて詳しく知りたい方や、実務への利用について検討している方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
ChatGPTとは
ChatGPTとは、アメリカの新興企業であるOpenAIにより開発された、対話型のAIチャットサービスのことです。2022年11月後半にリリースされ、12月時点では既に100万人ものユーザーを獲得、3か月後の2023年1月には1億人ものユーザー数を突破したことで大きな話題を集めました。
ChatGPTが注目を集めている理由は、GPTと呼ばれる自然言語の生成が可能なモデルが搭載されていること、そして膨大な学習により、複雑な質問に対しても自然で高精度な回答をおこなうことができる点です。
現在でもMicrosoft社の積極的な投資によりChatGPTの研究・開発が進められており、ビジネスをはじめとするさまざまな分野に大きな変革をもたらす可能性があることから、世界中から大きな期待を寄せられているAIツールとなります。
ChatGPTでできること
ChatGPTは非常に汎用性が高く、さまざまなことを実現できるAIプラットフォームです。ここでは、ChatGPTができることをご紹介していきます。
- 質問への回答
ChatGPTの基本的な機能。あらゆる話題・質問・テーマに対して的確な回答をおこなうことが可能。 - 自然な会話
対話型AIであるため、単一の質疑応答だけでなく、継続的なメッセージのやり取りをおこなうことが可能。話の流れに沿った対応をおこなうことができる。 - プログラミング言語の記述
ChatGPTに質問や命令をおこなうことで、プログラミングのベースコードをスピーディーに記述することが可能。 - 関数処理
質問を投げかけることで、表計算ソフトの関数の記述やGPT関数の自動入力が可能。 - 計算問題の解答
受験で出題されるような計算問題や、複雑な税金の計算なども、ChatGPTへ質問することで的確な回答を提示することが可能。 - ストーリーの記述
大まかな指定をするだけで、小説や脚本のストーリーを記述することが可能。 - 多言語対応
ChatGPTは、英語をはじめとするさまざまな言語に対応している大規模言語モデル。異なる言語間の翻訳には対応していないが、各言語へ対応した利用が可能。
ChatGPTの費用
ChatGPTは、OpenAIのアカウント登録を行えば誰でも利用することができます。プランは無料プランと有料プランが提供されており、アカウント登録後は無料プランからスタート。有料版を利用したい方は、アップグレードで対応する仕組みとなっています。
各プランの特徴は以下の通りです。
- Free Plan
誰でも無料で利用できるプラン。ChatGPTを気軽に試してみることが可能。 - Chat GPT Plus
月額20ドル(約2,600円)で利用できる有料プラン。無料プランと比べて可能性・応答速度に優れており、新機能が使えるといったメリットがある。
ChatGPTのメリット
ChatGPTは、そのポテンシャルを活かしたさまざまな使い方が可能です。ここでは、ChatGPTならではの主なメリットについてご紹介します。ツールの特性を理解するためにも、ぜひ参考にしてみて下さい。
膨大なデータをもとにした回答が得られる
ChatGPTは、インターネット上の膨大な情報を学習しており、それをもとに問いかけに対して回答を行います。自分でWeb検索をして見つけられなかった情報でも、ChatGPTなら的確な情報を見つけ出して答えてもらえることもあるでしょう。
リサーチや業務の時間を短縮できる
ChatGPTでは、調べたい情報を質問するだけで即座に回答を得ることができます。計算・プログラミング・ストーリー作成といったさまざまなアウトプットも生成できるため、情報のリサーチや業務の時間を短縮することができる。
自然な文章での回答が可能
ChatGPTは高度な自然言語処理機能が搭載されており、質問に対して人が書いたような自然で精度の高い文章で回答することが可能です。検索エンジンよりも柔軟でスムーズな回答を得ることができます。また、回答に対して重ねて質問をおこなうこともできます。
幅広い用途への活用が期待できる
ChatGPTはまだリリースされたばかりであり未知数な部分はありますが、その汎用性の高さや機能性の高さから、ビジネスにおいてもマーケティング・データ分析・問い合わせ対応など、さまざまな分野への活用が期待できます。
ChatGPTのデメリット
ChatGPTは汎用性の高さや回答精度の高さなど、メリットばかりに注目が集まっていますが、実際にはデメリットとなる面も存在しているため、把握しておくことが重要です。
ここでは、ChatGPTの主なデメリットについて解説します。
正確ではない回答をおこなう場合がある
ChatGPTは膨大な学習により精度の高い回答を行えるのが特徴ですが、あくまでインターネット上の情報をベースに回答の作成をおこなうため、誤ったソースを参照して不正確な回答をおこなう場合があります。人の感情や意図を汲み取ることもできないため、顧客対応をChatGPTに任せるといったことはまだ難しく、対応品質に限界がある点に注意が必要です。
ChatGPTの回答を鵜呑みにせずに、情報の信憑性が重要な場面では必ず自分でも追加の確認をおこなうことが重要となります。
不適切な表現をする場合がある
ChatGPTはあくまでロジックに基づいて回答をおこなうため、不適切な表現が含まれた回答をおこなう場合があります。膨大な学習によりある程度の表現の是正は行われますが、自身で思考しているわけではないため、思いがけず問題のある内容をアウトプットするケースもあるため注意が必要です。
新しい情報やトレンドの情報には対応できない
ChatGPTはインターネット上の情報を参考にしてはいるものの、2023年3月現在で公開されているChatGPTは2021年までのデータで学習しているため、最新の情報には対応していません。
インターフェースは英語のみ
ChatGPTは、AIチャット自体は日本語を含む多言語に対応していますが、UIに関しては英語のみで、UIを他の言語に切り替えるプラグイン等も存在しません。
今後アップデートや機能拡張が行われる可能性はありますが、現時点では英語のUIを使わざるを得ないことも注意点です。
ChatGPTは社内利用できるのか?
ChatGPTは多方面から高い評価を受けているため、社内業務への利用を検討している方もいるのではないでしょうか。
ここでは、ChatGPTを業務利用する際の懸念点・国内企業の利用状況・社内利用の可否について解説します。
ChatGPTを業務利用する際の懸念点
ChatGPTは、自然なテキストを生成できることや、プログラミング・計算などにも対応できる汎用性の高さから、すぐにでもビジネスの現場へ投入できそうな印象を受けます。しかし、業務利用にあたっては以下のような懸念点が指摘されているのが実状です。
- 情報セキュリティに懸念がある
業務利用をおこなう場合、機密情報・顧客情報・個人情報など、社外秘の情報や機密性の高い情報を誤って入力してしまう可能性がある。入力された情報をChatGPTおよびOpenAIが悪用する可能性は低いもののリスクはある。 - 情報の信憑性・不適切な表現の確認が必要
デメリットでも述べた通り、ChatGPTは完璧ではなく誤った情報や不適切な表現を回答する場合もある。人の手によるチェックが必要であるため、実務への投下が難しい。 - サポートが不十分
ChatGPTはオープンソースのツールであるため、サポートが限定的。ベンダーが有償で提供しているツールのようなきめ細やかなサポートを受けられないため、トラブル対応などにおいて不安がある。 - システムの信頼性
学習データの偏りによる回答の偏り・プライバシー等の情報の予期せぬ漏洩・学習データの不正利用の可能性など、AIシステムの信頼性にも懸念が残る。 - 法令への準拠
大量のテキストデータを学習に利用しており、この情報のなかには個人情報保護法・著作権等が設定された情報が含まれる可能性もある。国内企業が実務に利用するにあたっては、法的要件のクリアが課題となる。 - データ活用のオプトアウトについて個人申請が必要
ChatGPTでは、入力した情報をAIに学習させないようにオプトアウトを申請することが可能。しかし、企業が活用する場合はオプトアウト申請をChatGPTを利用する社員全員が個人で実施する必要があるため、労力の面からも管理の面からも非現実的。
日本企業におけるChatGPTの利用状況
ChatGPTの社内利用の可否について検討しているのであれば、日本企業の実際の利用状況についても把握しておくことが重要となります。
Business Insider Japanが国内主要IT企業を対象に実施した調査によると、ChatGPTの利用状況は以下のような結果となっています。
企業名 | 活用の可否 |
DMM.com | 活用していない |
GMOインターネット | 活用していない |
LINE | 活用していない |
MIXI | 活用していない |
Note | 活用している |
メルカリ | 活用していない |
ヤフー | 活用していない |
楽天 | 検討中 |
リクルート | 検討中 |
NTTドコモ | ×利用を認めていない |
KDDI | 活用していない |
ソフトバンク | 活用していない |
パナソニック | 検討中 |
日立製作所 | 回答を控える |
<出展> Business Insider Japan ChatGPT 日本IT企業各社の業務での活用状況
数多くの企業に対して調査を実施していますが、ChatGPTを活用しているのは14社中僅か1社という結果となっています。
ChatGPTの社内利用で実際に起こっている問題
ChatGPTは2022年末にリリースされてからさほど期間は経過していませんが、いくつか問題が起きた事例も確認されています。
具体的には、バグにより以下のような情報が他人のチャットに表示されてしまったそうです。
- 別ユーザーの氏名・メールアドレス・住所・クレジットカード番号の一部などが第三者のチャットに表示された
- 他人のチャット履歴が第三者のチャットに表示された
- 企業の社内情報に近い出力結果が表示された
参考:ChatGPTで他人のチャットタイトルや支払先住所、メアドなどが漏洩
また、ChatGPTでは、プロンプトと呼ばれるAIに指示を行うテキストを通じて、社内の機密情報や個人情報が漏洩するリスクが指摘されています。OpenAIではプロンプトをAIの再学習に使用しないことを発表しているものの、ユーザーに対しては機密情報は入力しないよう注意喚起しています。
このような情報漏洩リスクを回避するには、現時点では機密情報や個人情報といった重要な情報をChatGPTに入力しないという対策を行うしかありません。
しかし、より詳細なアウトプットを得ようとすると、プロンプトも詳細に入力する必要があるため、その過程で誤って余計な情報を入力してしまうケースも考えらえるため、従業員の情報リテラシーのみに任せるのは危険であると言えるでしょう。
ChatGPTを社内で活用するのは難しい
ChatGPTの利用状況は上述の通り厳しい結果となっていますが、その主な理由については、やはり先に解説した情報の正確性・著作権・セキュリティ等の問題のクリアが難しいためであるとの回答が行われています。
積極的に検討している企業は数社あるものの、現時点では社内の実務への利用に対してはまだまだ課題が残っていると言わざるを得ないでしょう。
社内問い合わせ対応への利用ならChatGPTより社内用チャットボット
ChatGPTが優秀なAIツールであることには間違いはありませんが、現状では社内問い合わせ業務への適用は難しい状況です。
しかし、社内問い合わせ業務にこういった対話型のAIの活用ができないというわけではありません。実はもう既に、対話型のAIを活用した社内問い合わせ対応ツールは多数存在します。それが社内向けの「チャットボット」です。
ここでは、社内用チャットボットの概要とメリットについて解説します。
社内用チャットボットとは?
チャットボットとは、チャットとロボットを組み合わせたもので、チャット形式の会話を通じて対応をおこなうことができる自動会話プログラムのことです。
このプログラムを使って作られた「社内用チャットボット」は、社内ヘルプデスク・サポート部門・ナレッジ共有など、社内用途を想定して開発されたチャットボットツールのことで、目的や用途が明確であるぶんスムーズに導入や運用を行えるという利点があります。
ChatGPTのように、ありとあらゆる問いに対応できるものではありませんが、社内で発生しうる問い合わせに対して、あらかじめ用意した回答をベースに対応をおこなうことができます。
社内用チャットボットのメリット
社内用チャットボットには、以下のようなメリットがあります。
- チャットボットに社内問い合わせ対応を任せられるため、対応担当者の負荷軽減につながる
- 総務・経理・人事・情シスなど、社内のあらゆる部署での利用を想定した機能が搭載されている
- 導入時に必要な回答データはテンプレートやフォーマットが用意されておりスムーズに作成できる
- グループウェアやビジネスチャットとの連携によって、利用されやすい環境が作れる
- 対応状況のレポーティングが可能で、運用の改善に活かせる
社内問い合わせ業務の効率化・自動化・利便化を図るのであれば、上記のようなメリットを得られる社内用チャットボットの活用がおすすめです。
まとめ
ChatGPTは、現在世界中から大きな注目を集めているAIプラットフォームです。さまざまな回答を行える汎用性の高さや、自然な文章で精度の高い回答を行えるのが大きな特徴となっていますが、社内での業務利用についてはまだまだ課題が残っているのが実状です。
まずはメルマガ配信など、文章の作成や案出しをメインに活用するのがよいでしょう。