IT導入補助金とは、中小企業や個人事業主がITツールを導入することを支援するための制度です。インボイス制度への対応も補助対象となることから、交付申請を検討している事業者も多いかもしれません。本記事では、IT導入補助金の補助対象となる事業者やITツールについて解説していきます。
1.IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、中小企業や個人事業主がITツールを導入するときに利用できる補助金制度です。
ITツールの導入は生産性の向上に有効な手段ですが、中小企業や個人事業主は資金面の課題から実現を諦めるケースも珍しくありません。そこでIT導入補助金では、ITツール導入にかかる経費の一部を補助することで、事業者の生産性向上やDX化をサポートすることを目的としています。
2.補助対象となる事業者
IT導入補助金の対象事業者は、日本国内で事業を営む中小企業・小規模事業者です。
飲食業や宿泊業、卸・小売業、運輸業など幅広い業種が補助対象となっていますが、それぞれ業種に応じて従業員数や資本金に細かい定めがあります。
業種分類 | 資本金 | 常勤の従業員数 |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種 | 3億円 | 300人 |
【小規模事業者】
業種分類 | 常勤の従業員数 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
3.申請対象外となる事業者
IT導入補助金では、中小企業や個人事業主のすべてが対象となるわけではありません。次に当てはまる事業者は対象外となるため注意が必要です。
・IT導入支援事業者
・指名停止措置を受けている事業者
・風俗営業
・労働関係法令違反によって送検処分を受けている事業者
それぞれくわしく確認していきましょう。
3-1.みなし大企業
みなし大企業とは「大企業の傘下に入っている」など、大企業と資本・人的につながりがある企業のことです。このみなし大企業には細かい定義が決められていますので、自社が該当しないかチェックしておきましょう。
画像引用:IT導入補助金2023公募要領
3-2.IT導入支援事業者
ITツール導入を補助する「IT導入支援事業者」となっている場合は、補助金の交付申請を行うことができません。
IT導入支援事業者の代表者や役員が他の事業者として交付申請を行う場合も、申請の対象外となりますので注意が必要です。
3-3.指名停止措置を受けている事業者
経済産業省や中小機構から「補助金等指定停止措置」、もしくは「指名停止措置」を受けている事業者は補助金の対象外となります。
3-4.風俗営業
IT導入補助金は公金を原資としていることから、風俗業を営む事業者も対象外となっています。
3-5.労働関係法令違反によって送検処分を受けている事業者
過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者も対象外です。
そのほか、反社会的勢力に関係する事業者や宗教法人なども対象外となっています。
4.補助対象となるITツールとは
IT導入補助金の対象となるITツールは、事務局より事前に認定を受けているものです。導入したいITツールが必ずしも対象となるわけではないため、あらかじめ対象のITツールをチェックしておきましょう。
なお、対象ITツールは申請する枠によっても異なります。
申請枠 | 対象となるITツール |
通常枠(A類型・B類型) | ・ソフトウェア
・導入関連費(オプション) ・導入関連費(役務の提供) |
セキュリティ対策推進枠 | ・ITツールの導入費用
・サービス利用料(最大2年分) |
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) | ・ソフトウェア
・導入関連費(オプション) ・導入関連費(役務の提供) ・ハードウェア |
ただし、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)のハードウェアは、ソフトウェアと同時に導入することが条件です。ハードウェア単体での導入は対象とならないため注意しましょう。
5.補助金額とスケジュール
IT導入補助金では、補助金額・スケジュールも利用枠によって異なります。ここでは、「通常枠(A・B類型)」、「デジタル化基盤導入類型」、「セキュリティ対策推進枠」の3枠の詳細を確認していきましょう。
5-1.通常枠(A・B類型)
通常枠(A・B類型)では、導入費用の2分の1以下を補助金として申請することができます。補助金額はA類型が5万円以上150万円未満、B類型が150万円以上450万円以下です。
【6次締切分】
締切日 | 2023年10月2日 (月曜) 17時 |
交付決定日 | 2023年11月6日 (月曜) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年4月30日 (火曜) 17時 |
事業実績報告期限 | 2024年4月30日 (火曜) 17時 |
【7次締切分】
締切日 | 2023年10月30日 (月曜) 17時 |
交付決定日 | 2023年12月4日 (月曜) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年5月31日 (金曜) 17時 |
事業実績報告期限 | 2024年5月31日 (金曜) 17時 |
5-2.デジタル化基盤導入類型
デジタル化基盤導入類型では、導入するITツールによって補助金額が異なります。
ITツール | 補助率 | 補助金額 | |
ソフトウェア | 3/4 | (下限なし)~50万円以下 | |
2/3 | 50万円超350万円以下 | ||
ハードウェア | PC・タブレット等 | 1/2 | 10万円以下 |
レジ・券売機 | 20万円以下 |
デジタル化基盤導入類型では補助金の下限が決められていないため、少額のITツールも対象となるのが嬉しいポイントです。インボイス制度への対応などでレジ・券売機の買い替えを検討している事業者は、本枠の利用を検討してみるとよいでしょう。
【8次締切分】
締切日 | 2023年9月11日 (月曜) 17時 |
交付決定日 | 2023年10月24日 (火曜) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年4月30日 (火曜) 17時 |
事業実績報告期限 | 2024年4月30日 (火曜) 17時 |
【9次締切分】
締切日 | 2023年10月2日 (月曜) 17時 |
交付決定日 | 2023年11月6日 (月曜) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年4月30日 (火曜) 17時 |
事業実績報告期限 | 2024年4月30日 (火曜) 17時 |
【10次締切分】
締切日 | 2023年10月16日 (月曜) 17時 |
交付決定日 | 2023年11月20日 (月曜) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年5月31日 (金曜) 17時 |
事業実績報告期限 | 2024年5月31日 (金曜) 17時 |
【11次締切分】
締切日 | 2023年10月30日 (月曜) 17時 |
交付決定日 | 2023年12月4日 (月曜) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年5月31日 (金曜) 17時 |
事業実績報告期限 | 2024年5月31日 (金曜) 17時 |
【12次締切分】
締切日 | 2023年11月13日 (月曜) 17時 |
交付決定日 | 2023年12月18日 (月曜) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年6月28日 (金曜) 17時 |
事業実績報告期限 | 2024年6月28日 (金曜) 17時 |
5-3.セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠では導入費用の2分の1以下が補助対象となり、申請できる金額は5万円以上100万円以下です。
【6次締切分】
締切日 | 2023年10月2日 (月曜) 17時 |
交付決定日 | 2023年11月6日 (月曜) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年4月30日 (火曜) 17時 |
事業実績報告期限 | 2024年4月30日 (火曜) 17時 |
【7次締切分】
締切日 | 2023年10月30日 (月曜) 17時 |
交付決定日 | 2023年12月4日 (月曜) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年5月31日 (金曜) 17時 |
事業実績報告期限 | 2024年5月31日 (金曜) 17時 |
6.IT導入補助金の申請フロー
IT導入補助金は、下記のフローに従って手続きを進めます。
ここでは、各ステップの流れを確認していきましょう。
6-1.事前登録
交付申請を行うにあたって、次の3点の登録・手続きが必要となります。
・gBizIDプライムアカウントの登録
・SECURITY ACTIONの宣言
・みらデジの経営チェック
この手続きについては、次章でくわしく後述していますので、併せてそちらも参考にしてください。
6-2.交付申請
IT導入補助金の申請はすべてオンライン上で行います。IT導入支援事業者と協力しながら、交付申請に必要な書類を作成しましょう。
申請書を提出した後、事務局側で採択可否の審査が行われます。
6-3.ITツールの契約・支払い
補助金の採択が決定したら、ITツールの発注・契約・支払いを行います。
交付申請の連絡を受ける前に発注したITツールは対象外となるため、必ず採択決定の連絡を受けてからITツールの導入を進めましょう。
7.事前に準備しておくべきもの
IT導入補助金の交付申請を行う際は、事前に下記の書類の準備や手続きを済ませておくとスムーズです。
・gBizIDプライムアカウントの取得
・SECURITY ACTIONの宣言
・みらデジの経営チェック
・履歴事項全部証明書
・納税証明書(その1またはその2)
それぞれ確認していきましょう。
7-1.gBizIDプライムアカウントの取得
IT導入補助金の交付申請を行うときは、「gBizIDプライムアカウント」のIDとパスワードが必要となります。アカウントの登録には2週間ほどかかりますので、まずはgBizプライムアカウントの登録を済ませておきましょう。
7-2.SECURITY ACTIONの宣言
SECURITY ACTIONとは、中小企業や個人事業主が情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度です。IT導入補助金では「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言することが要件となっていますので、自社のセキュリティ対策を踏まえたうえで宣言を行いましょう。
7-3.みらデジの経営チェック
みらデジとは中小企業庁が運営するポータルサイトで、中小企業や小規模事業者が抱える経営課題をデジタル化によって解決することをサポートする制度です。
IT導入補助金の交付申請は、みらデジ上で経営チェックを行うことも要件となっています。経営チェックを行わずに交付申請を行うと不採択となってしまうため、必ず事前に手続きを完了させておきましょう。
7-4.履歴事項全部証明書
IT導入補助金の交付申請では、添付書類として「履歴事項全部証明書」を提出します。すでに手元にあるものを使用しても問題ありませんが、提出が認められるのは発行日から3ヶ月以内のものです。
7-5.納税証明書(その1またはその2)
履歴事項全部証明書と併せて、納税証明書の提出も行います。納税証明書(その1納税額等証明用)もしくは(その2所得金額用)を準備しておきましょう。
なお、納税証明書として認められるのは科目が「法人税」のものです。消費税など他の税金は納税証明書として認められませんので注意してください。
8.まとめ
IT導入補助金では、対象となる事業者やITツールにいくつかの定めがあります。各枠の特徴を理解し、自社のITツール導入に役立つものはないか検討してみましょう。