バックオフィス業務を効率的に運用させたい。あるいは、ビッグデータなどを積極的に活用した集客活動を行いたい。そのような目的で生産性向上に繋がる新たなITツールを導入する企業について、政府が経済的にサポートするのが、いわゆる「IT導入補助金」事業です。
正式名称をサービス等生産性向上IT導入支援事業といいます。
このIT導入補助金を企業が申請するにあたって、重要な存在となるのが、ITツールを市場に提供している「ベンダー事業者」です。
補助金を申請したい企業にとっては、ベンダー事業者に申請手続きを手厚くサポートしてもらえます。
ベンダー事業者にとっては、IT導入補助金を通じて、新たなユーザーを獲得できます。
つまり、お互いにとってメリットがあるのです。
補助金申請の前に、ベンダー事業者のツールかどうか確認
IT導入補助金を申請したい場合、企業が導入するITツールは、生産性を向上させることさえできれば、どんなものでもいい……わけではありません。
まずは、そのITツールが、経済産業省に採択されたシステム開発会社・Web制作会社が提供しているものかどうかを確認してください。
このようなシステム開発会社・Web制作会社をベンダー事業者(IT導入支援事業者)といいます。
ベンダー事業者が提供する、IT導入補助金の対象となりうるITツールかどうかは、一般社団法人サービスデザイン推進協議会がまとめている、IT導入支援事業者・ITツール検索で調べられます。
サービスデザイン推進協議会とは?
2016年5月に設立された一般社団法人で、電通グループなどが中心になって運営されています。
様々なサービス産業のデザインの付加価値を高め、より効率的なものとするデジタル化の推進を目的としています。
「新たなサービスデザインとそれによる生産性向上や、市場創出に向けて課題を解決するために必要な規格や認証制度等を含む政策や施策、仕組み、プラットフォーム等を立案・設計・運用する事業」を、事業内容のひとつとしています。
その一環で、IT導入補助金のベンダー事業者の認証業務のほか、事業承継補助金、女性起業家等支援ネットワーク構築補助金にも関わっていますし、2020年には新型コロナウイルスによる売り上げ不振に陥った事業者を緊急で救済する持続化給付金の認定手続きにも関わりました。
ベンダー事業者によるサポートが必須の補助金
IT導入補助金は、必ずベンダー事業者の支援を受けた上で申請しなければなりません。
IT導入補助金を受けたい企業の経営者や従業員が、単独で申請手続きを行っても、受理してもらえません。
こうした条件は、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金などでは採用されていない、IT導入補助金ならではの特徴です。勘違いしやすいので、ご注意をお願い致します。
自社に補助金申請の手続きに詳しい従業員がいなくても、別に補助金コンサルタントのような専門家に報酬を払って相談しなくても、ベンダー事業者に申請手続きを案内してもらえるわけですから、その点では安心できます。
つまり、ベンダー事業者はIT導入補助金を申請したい企業にとって、頼れるパートナーのような存在なのです。
IT導入補助金のベンダー事業者になるためには?
ベンダー事業者としての登録(IT導入支援事業者登録)と、販売しているITツールの登録の両者が必要です。
ベンダー事業者としての登録は、1社が単独で行う法人登録のほか、複数社で連携して申請支援を協力し合うコンソーシアム登録があります。
コンソーシアムは、幹事社1社と、そのほかの構成員1者以上で構成します。コンソーシアム登録には必ず、コンソーシアム協定書の作成と提出が必要です。
コンソーシアムを形成する複数社の組み合わせは、何個も作って構いません。ただし、申請は1個ずつ行わなければなりません。複数個のコンソーシアムを同時申請することはできませんので、ご注意ください。
補助対象となるITツールは、おもに以下の通りです。
1.ソフトウェア(業務プロセス・業務環境)
⇒ 製品に含まれる機能によって、恒常的な生産性が向上する、またはテレワーク等の業務環境改善に寄与するソフトウェアが対象となります。
2.ソフトウェア(オプション)
⇒ 1.のソフトウェアを導入する際に必要となるソフトウェア等を指しています。自動化・分析ツール、汎用ツール(テレワークのツールなども含む)、機能拡張、データ連携ツール、セキュリティに関するオプション製品が補助対象となります。
3.役務(付帯サービス)
⇒ 1.のソフトウェアを導入する際に必要となる付帯サービスを指しています。導入コンサルティング、導入設定・マニュアル作成・導入研修、保守サポートが補助対象です。また、低感染リスク型ビジネス類型(C・D類型)に限っては、ハードウェアレンタルサービスも補助対象に加わります。
さらに詳細な要件につきましては、IT導入補助金ホームページなど、中小企業基盤整備機構や経済産業省が公式に発信している情報でご確認ください。
ベンダー事業者が果たす役割
申請段階
ベンダー事業者は、IT導入補助金の交付決定へと導くため、申請する企業(ITツール購入見込み客)をサポートします。
ベンダー事業者と補助金申請希望者との間で、ITツール導入に関する商談を進めつつ、交付申請に添付する事業計画書をまとめます。
(※この段階では、まだITツールの導入に関する契約や納品・対価の支払いなどをしてはいけません。補助金の申請や交付が認められなくなりますので、ご注意ください)
事業計画書のできばえが、申請の成否を決める大きな要素となりますので、計画内容に具体性や実現可能性が十分に盛り込まれているか、慎重に精査するようにしましょう。
ITベンダー事業者は、申請希望者に『申請マイページ』の招待を送り、申請に必要な基本情報の入力や、書類の添付をしてもらいます。
そして、ITベンダー事業者は、導入するITツールに関する商品情報や事業計画値を入力します。
そして、申請内容に間違いがない旨の宣誓を行い、事務局へ提出します。
交付決定・補助金事業実施
交付決定が出たら、補助対象となるITツールの契約と納品を行い、代金の支払いを受けます。契約が締結された事実が認められないと、補助金が交付されない場合があります。ツールの納品だけで済ませないように気をつけてください。
そして、後の事業実績報告のときに必要となる情報を、企業から前もって確認しておき、証拠を破棄、紛失させずに保存しておきます。
事業実績報告
そして、実施した事業内容をIT導入補助金事務局へ報告します。
報告された内容は、事務局にて確定検査を行います。必要に応じて、立入検査やヒアリングなどの追加調査が行われることがあります。
補助金額の確定・交付
補助事業が適切に実施された事実が認められれば、IT導入補助金事務局から、補助事業者(ITツール購入者)へ、補助金確定内容の承認を依頼する通知が届きます。
補助事業者はその内容を確認し、承認を行います。その際も、ベンダー事業者からのアドバイスがあると望ましいとされます。
そして、補助金の交付が確認されれば、ベンダー事業者と補助事業者は共同して、ITツールの導入によって生産性が向上した事実などに関する情報を、事務局へ報告します。
また、ベンダー事業者は補助事業終了後も、補助事業者のサポートを行います。
こうした一連の支援手続きを、単独法人のベンダー事業者で進めます。コンソーシアムを組んだ場合は、複数社で協力しながら手分けして進めることができます。