IT導入補助金2023は個人事業主も申請可能?申請方法や注意点とは
中小企業や小規模事業者が経営課題解決のためにITツールを導入することを支援する「IT導入補助金」。2017年に開始された補助金制度で、2023年も既に交付申請がスタートしています。本記事では、個人事業主が利用できるIT導入補助金について、補助額や補助対象、申請の流れを解説していきます。個人事業主でも申請可能なIT導入補助金とは?
IT導入補助金には複数の枠がありますが、個人事業主でも利用できる補助金は主に次の4種類です。
・通常枠(A類型)
・通常枠(B類型)
・デジタル化基盤導入類型
・複数社連携IT導入類型
種類によって補助額や対象となるITツールが異なりますので、自分の経営課題に適する枠はどれかよく検討しましょう。それぞれくわしく紹介していきます。
1.通常枠(A類型)
種類 | 通常枠(A類型) |
補助額 | 5万~150万円未満 |
補助率 | 1/2以内 |
プロセス数 | 1以上 |
ITツール要件(目的) | 類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、労働生産性の向上に資するITツールであること |
賃上げ目標 | 加点 |
補助対象 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 |
引用:IT導入補助金2023
通常枠(A類型)では、ソフトウェアの購入費やクラウド利用料、導入にかかった経費が補助の対象となります。会計ソフトや勤怠管理ソフト、受発注ソフトなどさまざまなITツールが対象となりますので、業務効率の改善や生産性向上を目指す事業者はぜひ導入を検討してみましょう。
2.通常枠(B類型)
種類 | 通常枠(B類型) |
補助額 | 150万~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 |
プロセス数 | 4以上 |
ITツール要件(目的) | 類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、労働生産性の向上に資するITツールであること |
賃上げ目標 | 必須 |
補助対象 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 |
引用:IT導入補助金2023
通常枠(B類型)はA類型と同じくソフトウェアの購入費やクラウド利用料、導入にかかった経費が補助の対象となっており、最大450万円の補助金が受けられることが特徴です。
A類型より大きな金額の補助を受けられる分、申請に必要なプロセス数が4以上となっており、より多くの機能を持つツールを導入する必要があります。
【※プロセスとは?】
プロセスとは、ITツールに搭載されている下記のような機能のことです。補助金の交付を受けるためには、定められたプロセス数をクリアしなければなりません。
・顧客対応・販売支援
・決済・債権債務・資金回収
・供給・在庫・物流
・会計・財務・経営
・総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス
・業種固有
・汎用・自動化・分析ツール
3.デジタル化基盤導入類型
〜50万円以下部分 | 50万円超~350万円部分 | ||
種類 | デジタル化基盤導入類型 | ||
補助額 | (下限なし)~350万円 | ||
機能要件 | 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 | 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 | |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 | |
対象ソフトウェア | 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト | ||
補助対象 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 |
参考:IT導入補助金2023
【ハードウェア購入費】
・PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機:補助率1/2以内、補助上限額10万円
・レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円
デジタル化基盤導入型では、ソフトウェアの購入費やクラウド利用料などに加えて、ハードウェアの購入費も対象となることが特徴です。
個人事業主の中には、インボイス制度への対応からレジや券売機などのハードウェアの買い替えを検討している方も多いかもしれません。ソフトウェア・ハードウェアどちらも新しく導入する場合は、デジタル化基盤導入類型の活用を検討しましょう。
4.複数社連携IT導入類型
種類 | 複数社連携IT導入類型 | |||
対象経費 | デジタル化基盤導入類型の要件に属する経費 | デジタル化基盤導入類型の要件に属さない複数社類型特有の経費 | ||
(1)基盤導入経費 | (2)消費動向等分析経費 | (3)代表事業者が参画事業者をとりまとめるために要する事務費、外部専門家謝金・旅費 | ||
補助額 | (下限なし)~350万円 | 50万円×グループ構成員数 | ((1)+(2))×10%に補助率2/3を乗じた額もしくは200万円のいずれか低い方 | |
内、~50万円以下部分 | 内、50万円超~350万円部分 | |||
機能要件 | 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 | 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 | – | – |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 | 2/3以内 | 2/3以内 |
補助上限額 | 3,000万円 | 200万円 | ||
対象ソフトウェア | 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト | 各種システム | – | |
補助対象 | ・ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費
・PC・タブレット等:補助率1/2以内、補助上限額10万円 ・レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円 |
・ソフトウェア購入費・クラウド利用料(1年分)・導入関連費
・AIカメラ・ビーコン・デジタルサイネージ等 |
– |
参考:IT導入補助金2023
複数社連携IT導入類型は、複数の事業者で連携してITツールを導入する際に受けられる補助金です。
個人事業主の場合、複数の事業者と連携してITツールを導入した方が効率が良い場合があります。取引先や同業者などと連携を検討している際は、複数社連携IT導入類型の活用がおすすめです
個人事業主のIT導入補助金2023申請方法
IT導入補助金2023は、次のフローに沿って申請手続きを行います。
それぞれくわしく確認していきましょう。
STEP1. IT導入支援事業者・ITツールの選定
まずは、業種や事業規模、事業課題に応じてIT導入支援事業者とITツールを選びます。補助金の対象となるIT導入支援事業者やITツールは公式サイトでも検索できますので、必ず確認しておきましょう。
なお、実際にITツールを購入するのは、補助金の交付申請を終えて審査に通過してからですので、この段階でITツールを購入しないように気を付けてください。
STEP2. 要件を満たすための諸手続き
補助金の交付申請を行うためには、次の3つの手続きが必須となっています。
・「gBizIDプライムアカウント」の取得
・「SECURITY ACTION」の実施
・「みらデジ」の「経営チェック」の実施
【「gBizIDプライムアカウント」の取得】
交付申請を行うにあたって、「gBizIDプライムアカウント」の登録が必要となります。アカウントがない場合は、gBizIDのホームページにて登録手続きを行ってください。
プライムアカウントの発行には2週間ほどかかるため、早めに手続きを行うことがおすすめです。
【「SECURITY ACTION」の実施】
補助金の交付申請には、情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言も求められます。
「SECURITY ACTION」とは、事業者が情報セキュリティ対策に取り組むことを宣言する制度で、「一つ星」または「二つ星」を宣言しなければなりません。
【「みらデジ」の「経営チェック」の実施】
「みらデジ」ポータルサイト内で、「経営チェック」を行います。みらデジとは中小企業庁が実施する制度で、中小企業や小規模事業者の経営課題をデジタル化で解決することをサポートしています。
なお、みらデジの経営チェックを行わずに交付申請を行った場合、必要な要件を満たしていないとして不採択となってしまいますので、必ず事前に手続きを済ませておきましょう。
STEP3. 事業計画の策定
補助金の交付申請には、事業計画の策定が必須です。IT導入支援事業者と協力しながら申請書を作成しましょう。
交付申請を提出したら、事務局にて採択可否の審査が行われます。
IT導入補助金2023申請後の流れ
交付決定の通知を受けた後、ITツールの発注や契約、支払いを行います。交付決定の連絡を受ける前にITツールを購入した場合は、補助金の対象外となってしまうため注意が必要です。
ITツールの購入を終えたら事業完了報告書を提出し、事務局から補助金が振り込まれます。
その後、ITツールを導入したことによる効果を「事業実施効果」として報告します。報告には期限が定められていますので、IT導入支援事業者と協力しながら期限内に報告を終えましょう。
個人事業主が準備すべき書類
個人事業主が補助金の交付申請を行う場合、次の3点の書類が必要となります。
・運転免許証、運転経歴証明書、住民票のいずれか1点
・所得税の納税証明書(その1またはその2)
・確定申告書(令和4年分)
それぞれ注意点がありますので、下記で確認しておきましょう。
【運転免許証、運転経歴証明書、住民票のいずれか1点】
・住民票は交付申請日から3ヶ月以内に発行されたもの
・運転免許証は登録申請日が有効期限内であるもの。裏面に変更履歴が記載されている場合は裏面も提出が必要。
【所得税の納税証明書】
・直近分で税務署の窓口にて発行されているもの
・電子納税証明書の場合は、PDF形式にて発行されたもの
【確定申告書】
・税務署にて受領されていることが確認できるもの
個人事業主がIT導入補助金2023を申請する際の注意点
個人事業主がIT導入補助金2023を申請する場合、いくつか気を付けたいポイントがあります。ひとつずつ確認していきましょう。
1.申請対象か確認する
IT導入補助金にはソフトウェア購入費やクラウド利用料、導入関連費、ハードウェア購入費といった補助対象が決められています。さらに対象となるソフトウェアは事務局によりあらかじめ選定されており、その中から導入ツールを選ぶ必要があります。
導入したいツールが必ずしも申請対象とは限りませんので、事前に対象のITツールを確認しておきましょう。
2.事業計画書に漏れがないかチェック
交付申請には事業計画書を併せて提出します。事業計画書は審査を行ううえで重視されるポイントですので、誤記入や記載漏れがないか入念にチェックしましょう。
なお、事業計画書はIT導入支援事業者と協力して作成しますので、「書き方が分からない」というときもすぐに確認ができます。
3.IT導入支援事業者の選定
IT導入補助金の交付申請はIT導入支援事業者と共に進めていきます。補助事業を実施するための大切なパートナーですので、地域や対応業種などを考慮したうえで選定しましょう。
なお、IT導入支援事業者は公式サイトから検索することが可能です。導入したいツール名や地域、プロセスなどの項目からニーズに合う事業者を探すとよいでしょう。
4.同時に申請できる枠がないか確認
IT導入補助金は、同時に複数の枠で補助金を受けることが可能です。交付申請を行う際は、他に申請できるものがないか確認してみましょう。
ただし、複数社連携IT導入類型については他の枠と重複申請が行えません。
5.ハードウェア単体購入の申請は不可
前述の通り、デジタル化基盤導入類型ではハードウェアの購入費も補助の対象となっています。ただし、ハードウェアを単体で購入した場合は交付申請の対象となりません。
デジタル化基盤導入類型の補助金を受けるためには、会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトなどのソフトウェア導入と併せてハードウェアを購入する必要があります。
IT導入補助金2023のスケジュール
IT導入補助金2023のスケジュールは、日程が確定している募集分より随時公開されています。
【通常枠】
6次締切分 | 7次締切分 | |
締切日 |
2023年10月2日 (月) 17:00
|
2023年10月30日 (月) 17:00 |
交付決定日 | 2023年11月6日 (月) (予定) | 2023年12月4日 (月) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00 | 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00 |
事業実績報告期限 | 2024年4月30日 (火) 17:00 | 2024年5月31日 (金) 17:00 |
【デジタル化基盤導入類型(デジタル化基盤導入類型)】
8次締切分 | 9次締切分 | 10次締切分 | |
締切日 | 2023年9月11日 (月) 17:00 | 2023年10月2日 (月) 17:00 | 2023年10月16日 (月) 17:00 |
交付決定日 | 2023年10月24日 (火) (予定) | 2023年11月6日 (月) (予定) | 2023年11月20日 (月) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00 | 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00 | 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00 |
事業実績報告期限 | 2024年4月30日 (火) 17:00 | 2024年4月30日 (火) 17:00 | 2024年5月31日 (金) 17:00 |
【複数社連携IT導入類型】
3次締切分 | |
締切日 | 2023年10月2日 (月) 17:00 |
交付決定日 | 2023年11月16日 (木) (予定) |
事業実施期間 | 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00 |
事業実績報告期限 | 2024年5月31日 (金) 17:00 |
各締め切り時間の直前は申請ページへのアクセスが集中し、接続に時間がかかる場合があります。締め切り時間を過ぎると申請が行えなくなりますので、申請手続きは余裕を持って行いましょう。
まとめ
IT導入補助金2023は、中小企業や小規模事業者を対象とした補助金で、個人事業主でも利用することが可能です。各枠によって補助額や補助対象が異なるため、交付申請を行う際は違いをよく理解することが大切です。
2023年分はすでに交付申請がスタートしていますので、ぜひ業務効率化や生産性向上を目指してITツールの導入を検討してみましょう。