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RPAを導入する効果とは?導入のポイントや費用対効果の測定方法を解説

労働人口の減少に伴う人手不足、働き方改革の流れを受けたワークスタイルの柔軟化、コロナ禍におけるテレワークの推進などの影響を受け、現在の企業では業務の効率化が喫緊の課題です。ITやAI(人工知能)を活用した業務の効率化が図られるなかで、その一翼を担う存在として期待を集めているのが、「RPA(Robotics Process Automation)」の導入です。

RPAは人間がデスクトップパソコンなどを操作して行っていた定型的な作業をロボット(ソフトウェア)に学習させることで業務を自動化できるという特徴をもっています。

日本企業においても導入が年々進み、2019年の調査では47.5%に到達(ガートナー「企業におけるRPAの推進状況に関する調査結果」、2020年2月21日発表)(※1)しております。
その市場規模は、2020年度には729億円に上ると予測されています(矢野経済研究所「RPA市場に関する調査」、2020年12月7日発表)(※2)。

今回は、RPAの導入で得られる効果について解説します。

1.RPAの導入で得られる3つの効果とは

働き方改革などの影響で、AIと並んで一躍注目を集めるようになったRPAですが、人間がパソコンを使って操作する作業を自動化できるという点では、Excelなどのマクロ機能に似ています。
しかし、一般的なマクロ機能では自動化できる範囲は一定のアプリケーション内に限られますが、RPAツールでは複数のシステムやアプリケーションを横断した作業の自動化が可能になるのが大きな特徴です。

RPAを導入して業務を自動で対応できるようにすると、企業にさまざまな効果やメリットが生まれます。ここでは、そのなかで特に大きな3つの効果をご紹介します。

(1)人的エラーをなくすことができる

人間が行う作業には、抜け漏れや間違いなどのミスがつきものです。
ヒューマンエラーとも呼ばれる人為的なミスは、初心者の不慣れから、作業担当者の疲労から、操作時のケアレスミスから、あるいは特に理由がなくても起こり得ます。
そして、どれほど万全に準備しても、人間が作業を担当する限りミスをゼロにすることはできません。 そのため、人が担当する作業はダブルチェックが不可欠です。

チェックの結果ミスが見つかれば、その修正対応をとる必要が生じます。
ここまでして初めて作業が完了するということになりますので、相応の人手がかかるわけです。
しかし、RPA製品を導入して作業を自動で対応できるようにすれば、ロボットはあらかじめ指示された内容にしたがって作業を行い、指示にない作業は行うことがありません。
したがって、ヒューマンエラーは起こりません。

単純作業の繰り返しであっても、人間のように集中力が切れたり操作を誤ったりするなどしてミスしやすくなるということもありません。
人的ミスがなくなるということは、作業のダブルチェックやミス発生時の修正処理なども必要なくなり、品質管理にかけるリソースも軽減できます。チェックや修正なく最初から精度の高い成果物を得られるため、業務効率は格段に上がるでしょう。

(2) 人件費を削減できる

人間が行っていた作業を、RPA製品の導入によってコンピュータに任せられるようになれば、それだけ人手がかからなくなります。ということは、それだけ人件費を削減できるということになります。

RPAの導入によって、人間の作業時間をどれだけ削減できるかというのは作業内容によって異なりますが、自動化できる定型業務が多ければ多いほど削減効果は積み上がります。なかには、RPAの導入によって、年間でおよそ2万8000時間の削減効果を上げた企業もあるほどです。

RPAの導入、運用には費用がかかりますし、作業を自動でできるようにするための整備作業も必要となりますが、それだけの人件費を支払い続けることを考えれば、最終的な削減効果は大きいのではないでしょうか。

働き方改革が叫ばれるなか、残業時間の削減という効果も期待できます。
また、1年のうち特定の時期だけ作業量が増えるような業務もありますが、作業量が増えたからといってすぐに人手を増やし、作業が減ったら人を減らすというのも難しいものです。

RPAを導入すれば、一時的な人員を採用するような費用負担もありません。
加えて、RPAを導入して作業を自動で対応できるようにすれば、作業スピード自体が高速になります。人手での作業時は1件あたり数分以上かかっていたような作業も、RPAで自動化すれば1分未満で完了できるということも起こりえます。

そのスピードを生かし、クライアントへの納品物を早く提供できるようになる場面もあるかもしれません。そうしたスピードも、企業にとっては大きなメリットでしょう。

(3) 生産的な仕事に集中できる

RPAを導入し、単純作業の繰り返しのような定型作業をロボットに任せることができれば、それまで作業にあたっていた担当者の手が空き、その分、重要度の高い、人間ならではの生産的な仕事、創造的な仕事に集中できるようになります。

単純作業も会社を支える大事な仕事ですが、とはいえパソコンの単純操作の繰り返しのような作業ばかりでは社員のモチベーションは下がってしまいますし、発想する力も衰えがちになってしまいます。そうなれば、ほかの仕事を求めて離職する社員が出てくる可能性もあります。

RPAの導入でロボットに定型作業を任せられるようになれば、そうした離職リスクを下げる効果にもつながるのです。そして、創造的な仕事に集中できるようになった社員はモチベーションが高まり、能力を存分に発揮して、企業の発展に大きな成果を提供してくれるようになるでしょう。それは企業にとって、非常に有用な人材活用のかたちといえます。

2.RPAの費用対効果を測定する2つの方法

企業にさまざまな効果を提供できる可能性を秘めたRPA。その導入に関心を寄せる企業にとって、次に気になるのが費用対効果ではないでしょうか。ここからは、RPAの費用対効果の種類とその測定について解説します。

(1) 定量的効果を測定する「定量的測定」

定量的効果とは、数値・数量で表すことができる効果のことです。
その定量的効果を測定するのが「定量的測定」です。

特にわかりやすいのは、RPAの導入による作業の自動化で人間の作業時間をどれだけ削減でき、その結果人件費をどのくらい削減できたかという効果の測定です。
年間の削減効果は、 「RPA導入前、1件あたりにかかっていた作業時間」 × 「RPA導入前、年間に対応していた作業件数」 × 「RPA導入前の作業担当者の時給」 =「年間で削減できた人件費」として計算することができます。

そして、この「年間で削減できた人件費」と「RPAの導入・運用にかかるコスト」を比較し、前者が後者を上回れば、費用対効果があったとみることができます。
削減効果算出のためには、RPA導入前にその業務にどのくらいの作業時間を要していたのかというデータを記録しておく必要があります。

また、作業担当者が複数人の場合、作業時間や時給が異なる場合がありますので、それぞれのデータを考慮して計算する必要があります。

(3) 定性的効果を測定する「定性的測定」

定性的効果とは、数値、数量で表しづらい質的な効果を指します。
数値で表せないのでデータも取りづらく、効果の測定が難しいですが、総合的に生産性の向上に寄与する要素が多く、RPAの導入を検討するうえで重要な効果といえます。

定性的効果には、以下のようなものがあります。
・ヒューマンエラーの削減や成果物の精度向上とそれに伴う顧客満足度の向上
・作業の自動化による人的ミスが引き起こす売上機会逸失の防止
・人による意図的な情報漏洩またはミスによる情報漏洩のリスク軽減

また、社内リソースを最適配置できるようになることでの従業員満足度の向上や離職防止にもつながる可能性があり、これらも立派な定性的価値と言えるでしょう。

3.RPAの導入で費用対効果を得るための4つのポイント

RPA導入の前に費用対効果を見積もったつもりでも、いざ導入してみると「思っていたより効果を得られなかった」という声があがる、というのは決して珍しくありません。せっかく導入するRPAで最大限の費用対効果を実感するためには、どのようなポイントを押さえておくべきでしょうか。

(1) RPAの導入・運用にかかる費用を正確に把握する

RPA導入の費用対効果を測るためには、前述のとおり「RPAの導入・運用にかかるコスト」を見積もり把握しておく必要があります。ところが、この見積もりが甘いと、RPAを実際に導入したあとになって費用が膨らんでしまいます。

RPAの導入でせっかく人件費を削減できても、RPAの導入・維持にそれ以上の費用がかかってしまえば、費用対効果を得ることができません。
そうならないよう、RPAの導入・運用にかかるコストをきちんと把握しておきましょう。代表的なコストとしては、次のような項目が挙げられます。

【RPAツール導入時のコスト】
・RPAツールのライセンス費用(ツールを実際に使用するライセンス数で計算する)
・RPAツールを利用するためのサーバーやパソコンなどのハードウェア取得費用
(RPAツールは、大きく分けて「サーバー型」と「デスクトップ型」がある)
・RPAツールの選定から、RPAツール導入時のルール策定などを実施するための導入支援費用(社外に委託するか社内で担当するかによっても異なる)
・業務の自動化にシステム連携が必要な場合などに生じる、システム開発の費用

【RPAツール導入後のコスト】
・RPAツールのライセンス利用費
・RPAツール用のサーバーやパソコンなどのハードウェア維持・管理費用
・RPAツールと関連システムの保守、運用およびその支援費用
・RPAツールのロボットを管理・メンテナンスするためのコスト

(2) 定性的な効果にも目を向ける

前項で測定できる費用対効果は、あくまで定量的効果の部分です。もちろん、少なからぬ投資をする以上、数値の計算上で費用対効果を得ることも重要ですが、先にも述べたように、RPAソリューションの導入で企業が得るのは定量的効果だけではありません。

数値には表れにくい、定性的効果の影響も実は小さくないのです。
単純作業の繰り返しや、ダブルチェックの手間、ミスの修正処理などに大きな負荷を感じ、それによってモチベーションが低下しつつあった社員が、RPAソリューションの導入によってクリエイティブな仕事に集中できるようになれば、モチベーションを取り戻せるかもしれません。

あるいは、度重なるヒューマンエラーによる成果物のクオリティの低さに不満を抱いていた顧客が、RPAの導入で品質の高い成果物の提供を受けられるようになれば、その満足度が向上するかもしれません。そうした効果も、RPA導入による費用対効果としては見逃せないものです。

出てきた効果をできるだけデータで可視化したいと考えるのであれば、RPAの導入で期待する定性的効果をリストアップしておき、導入前後の違いを比較できるようなデータを収集したり、社員や顧客の満足度データを得るためのアンケートの実施などを検討するといいでしょう。

(3) RPAが適した業務・適さない業務の違いを理解する

RPA製品を導入したからといって、すべての作業を自動にできるわけではありません。
せっかくRPA製品を導入しても、自動にできる処理が少なければそれだけ削減効果が小さくなります。

つまり、RPA導入のメリットを最大限に高めるためには、RPAの特徴を把握し、自動化に向いている業務とそうでない業務を適切に見極め、自動にできる業務でどれだけの削減効果を見込めるかを見積もることが大切です。

RPAの自動化は、ロボット(ソフトウェア)に行わせる業務のルールを人間が作成することで実現します。したがって、ルール化できない業務は自動で対応することができません。
条件分岐の多い業務など一定のルールを定められない業務は、RPAで自動化しロボットに任せることは難しいでしょう。

そしてRPAではコンピュータ上でロボットに作業をさせますので、コンピュータの外で行うような手作業も自動化できません。反面、RPAは、同じ処理の繰り返しが得意という特徴があります。

人間なら集中力が切れてしまうような何十回、何百回といった同じ作業の繰り返しも、コンピュータなら同じクオリティで繰り返すことができ、疲れてミスをするといったこともありません。

(4) システム連携でより高度な自動化の実現も

さらにRPAの恩恵を受けるためには、システムを連携させIT技術をフル活用することで、より高度な自動化を実現できるということも視野に入れておくといいでしょう。
例えば、RPAを活用してほかのシステムなどから情報収集をすることができます。
RPAには、パソコン上のシステムやソフトウェアの起動操作を行う機能もありますので、ID、パスワードを入力してシステムを操作するといったことも可能です。

企業の受発注システムとRPA、OCRをITで連携させることで、受発注業務に関連して発生する大量の書類を読み取り、その処理を自動化するといったことも可能になります。
ERP(基幹業務システム)を使った業務も定型作業が多いため、RPAと連携させれば業務が飛躍的に効率化することも可能です。

IT技術を活用した業務効率化という点では、AIとRPAが混同して語られることがあります。
RPAとAIにはいろいろな違いがありますが、業務の自動化という観点で違いを挙げれば、RPAはRPAサービス単体で定型作業の自動化を実現できるのに対して、AIはAIサービス単体で何かの仕事をするというよりも、システムやデバイスに組み込まれるかたちでその技術を活用されるケースが大半です。

AIは「人工知能」という名前からもわかるように人間の「頭脳」を代替する存在になり得るツールですが、RPAは人間の頭脳が決めた作業を担当する「筋肉」を代替するツールといえるでしょう。ただ、RPAとAIのシステム連携は可能です。RPAとAIの機械学習を連携させ、会計業務における仕訳処理の自動化を実現したといった事例もあります。(※3)

いずれもシステム開発が必要で、自動化のハードルは少し高くなりますが、煩雑な作業が多く入力ミスや操作ミスなども多くなりがちな業務をITの利用によって効率化できれば、そのメリットは大きいでしょう。

まとめ

IT技術の進化を受け、政府によって働き方改革が推進されるようになり、企業ではさまざまな業務の効率化が図られるようになってきました。
そうした状況で、RPAの利用は、企業に多くのメリットをもたらします。

将来的にAIや多様なシステムと組み合わせれば、より高度な自動化も可能になります。
とはいえ、その恩恵を得るためには準備が必要です。
まずは自社における業務の現状を把握し、RPAの導入によってどの業務を自動化し、どのくらいの削減効果を見込むことができるか見積もることが重要です。

また、同じRPAソリューションといっても、サーバー型とデスクトップ型があるなど、ソリューションによって提供される機能も多様です。
RPAの導入に際しては、ソリューションの比較検討も合わせて行う必要があります。

しかし冒頭に述べたように、RPAの市場規模は拡大しており、数多くのRPAサービスが参入しています。そのなかから自社に最適なサービスを選ぶのが難しいと感じたら、RPAの導入支援サービスを利用したり、RPAの導入支援製品を提供するようなサービスを利用するのも有効です。なかには無料トライアルを実施している企業もありますので、そうしたサービスも活用しましょう。

RPAで作業を自動化する作業は、プログラミング不要とはいえ難易度は低くありません。
そんなときは、RPAのルール作りなどを支援してくれるサービスもあります。
ツールのライセンスと導入支援サービスをセットで提供している企業に相談するという選択肢もあるでしょう。

最終的に「これなら活用できる」と思えるRPAサービスを選び、RPAの機能や特徴をフルに活用して、適切な自動化および継続的な管理を行うことができれば、企業にとって大きな武器となるでしょう。

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